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変化が生じたのは解田くんが転校してきて1週間ぐらいたった頃だった。
席替えがありボクの前の席が解田くんになったのだ。
人気者の解田くんの席の周りには休み時間ごとにクラスメイトが群がりボクは毎回机を後ろにずらす。
そんなボクを不憫に思ったのか最近やたらと後ろを向きボクに話しかけてくる。
「今日一緒に帰ろうぜ」
帰りの会の途中に小声でそう言われ、
う、うん、と聞こえたか聞こえないのかわからないぐらいの声で答える。
家の方向一緒なのかな、、、少し不安になる。
解田くんはボクの解答には興味がないのか何の反応もない。
ボクを誘ったのではなく決定事項を伝えたということか、さすがマスターだ。
もうすでに答えは出ているんだね。
帰りの会が終わりリュックサックを半分背負いながら解田くんの後を急いで追う。
「あっ、待って、、、」
きっとボクの声なんて届いていないんだろう、そう思いながらとにかく置いていかれないように急ぐ。
「トクってアイスクリーム好き?」
階段を降りて昇降口の下駄箱の上履きを脱いだあたりで解田くんはボクに話しかける。
「う、うん」とまた聞こえた様な聞こえない様な返事をしてしまう。
ボクは話を続けようと急いで「解田くんは?」と聞く。
「解田くんって言うのはやめようぜ!マスターでいいよ!みんなそう呼ぶし!
あ~腹減ったな!」
と言って、小雨が降り出したせいか小走りで校門を出て行ってしまう。
ボクには解答を与えてはくれないマスター。
アイスクリーム、好きなのかな、、、
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