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走るのも速いマスターは、降り出した小雨も気にせずさっさと行ってしまい、ボクは右手に置き傘の折り畳み傘を開くことなく持ったまま息切れしながらやっとのことで追いつく。
すると、見慣れない喫茶店の前にマスターが立っていた。
こんなところにお店なんかあったかな、、、
看板には「Melt」と書いてあり新しくて綺麗な感じの店だった。
「ここ、俺んち」
とマスターが言うのと同時に右腕を引っ張られお店の中に引きずり込まれる。
店内はとても明るく清潔で、コーヒーの香りと甘いいい匂いで心地良かった。
「マスターの家ってお店やってるんだ、、」
びっくりしたけど、びっくりするぐらい落ち着いてマスターに話しかけた。
「うちのアイスクリームは絶品なんだ!」
と言うとキッチンに向かい勝手に用意し出してくれた。
バニラアイスに板チョコがトッピングしてあり、本当に美味しそうだ。
「いっただきまーすっ」
とマスターが言うとガシガシ食べ始め、ボクも慌ててスプーンを持つ。
口に含んだ瞬間濃厚なバニラアイスが口の中で素早く溶け始め、喉を通り食道をつたい、冷たさが程よい温かさに変わっていく感覚を感じる。
すぐチョコレートが後を追い口内にまとわりつきバニラアイスクリームとはまた違った甘みがボクの縮こまった心をふわっと溶きほどいてくれる様な不思議な感覚だった。
ボクは思わず「おいしい!」と声をあげると、マスターは嬉しそうに笑った。
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