2、神様女神様、やっぱりやります

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「君が新入部員か」  次に私の前でほほえんだのは、仙人だった。白いひげをたくわえたおじいさん先生。入部したいと言ったら、室伏さんが奥の音楽準備室から連れてきてくれた。吹奏楽の顧問らしい。   こんな先生、うちの学校にいたのかと驚く。芸術で音楽専攻の生徒は、この人に音楽を教わっているのだろうか。授業をしている様子が、まるで想像できなかった。   「先生は、成木先生のお弟子さんをされてた人なんだよ」  室伏さんはにこにこと説明する。仙人もほっほっと、それこそ仙人ぽく笑った。 「先生にはお世話になってな。室伏から聞いたが、君は成木先生の曲をきっかけに入部したそうだな」 「はぁ、まぁ」  なんだか恥ずかしくてうつむいた。あの写真のおじさんの、熱狂的なファンかなにかだと言われているみたいだ。しかも、それをこの人たちは嬉しそうに語る。なんだかオタクの集まりに入り込んでしまったみたい。 「じゃあ、入部届書いてな」  私は大人しく、自分のクラスと名前を書いた。そして手を止める。希望楽器、の欄がある。  室伏さんと同じ楽器だなんて嫌がられるだろうか。室伏さんの顔をちらりと見ると、彼女はまた小首をかしげて笑った。  ここまで来て、妥協なんてできるか。クラリネット、と濃いい字で書き記す。先生も室伏さんも、それについては何も言わなかった。
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