3、はじめての部活時間

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3、はじめての部活時間

 次の日の放課後、友美がまた声をかけてきたのを、適当に断って音楽室に向かう。まだ、友達には言ってなかった。「急に真面目になってどうしたの」って驚かれるに決まってるから。それは少し恥ずかしい。  すでに、音楽室からはピーとかプーとか、音が聞こえる。曲じゃなくて、楽器の調子を確かめているような音だった。足を踏み入れると、みんなが一斉にこちらを向く。音がやんで、しんとなった。そして、一人ずつ目をそらして、またピーとかプーとか楽器の調子を確かめることに戻って行った。だけど、意識されているのがすごく伝わって来る。 「二年で新入部員になるって子?」 「あぁ、室伏が言ってたな」 「経験者なのかな?」 「よく遊んでる子じゃない?」  楽器の音に混じって、ひそひそと聞こえて来る。いたたまれない。鞄を握りしめたとき、肩を叩かれた。 「三島さんいた。先に行っちゃうんだもん」  室伏さんだった。そうだ、一緒に行けばよかったんだ。そういうことを考えつかないほど、気がせいていたみたいだ。 「部長に紹介するね」  連れていかれたのは、トランペットを吹いている男子の前だった。細くて背が高い。足が長いからか、異様にズボンを上にあげているように見えて、なんだかおかしかった。 「山重部長、この子、新入部員です」 山重部長は、トランペットを大切そうに置くと、私のことをしげしげと眺めた。 「二年からなんて珍しいね」 「はぁ、まあ」 「三島さん、成木先生が好きなんですよ」  またそれを言う。私がオタクみたいに思われるじゃん。室伏さんの方を軽く睨むと、部長が、がしっと手を握って来た。 「素晴らしいじゃないか」 「え?」 部長はぶんぶんと手を振りまわしながら目を輝かせた。 「成木先生の良さがわかるなんて、大物だな。いいよいいよ、入りなよ」  あのおじさんの信者がここにはたくさんいるようだった。室伏さんにしろ、仙人にしろ、部長にしろ。私もその一員として認められたらしい。
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