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「で、さっきも言ったけどパーカスって難しいからね」
念を押されたけど、簡単とか難しいとか以前に、よく分かっていない。
「そうなんですか」とうなずいておく。眼鏡女子、根本さんは三年生らしい。先輩だ。
「でも人が足りていないのは事実なの。だから、三島さんには戦力になってもらうね!」
「はぁ」
「これをやってもらいます!」
指さされたのは、大きな太鼓だった。斜めに設置されている。
「え、こんなでかいのを?」
驚くと、根本さんは満足そうににこりとした。
「大太鼓。結構、重要だからね」
「こんなのできるかな」
「教えるから大丈夫大丈夫」
「ちなみに、あれは何っていうんですか?」
根本先輩が最初隠れていた太鼓を指さす。
「あ、これぇ。これは、ティンパニーよ」
更に根本先輩は笑顔になった。「色んな音が出せるんだから」と、パパパンっ、と叩いてみてくれた。すごい手さばきだ。
「うわぁ、すごっ」
「でしょう」
ティンパニーが相当好きらしく、根本先輩の鼻は自慢げに膨らんだ。ティンパニーの話題を出しておけば、まぁまぁうまくやっていけそうで、私は胸をなでおろした。
「これが音源CDで、これが楽譜」
「音源CD?」
「そう。次の演奏会の曲ね。家で聴いて練習してきて。あなたは大太鼓だから、ほら、楽譜だとね、ここを叩くの。マーカーでもしとくといいよ」
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