3、はじめての部活時間

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 一時間経ったころ、みんな楽器ごとに固まって座りはじめた。みるみる内に、オーケストラの形に椅子が並べられる。しばらくすると、仙人が奥の準備室から出て来た。コツコツ、と手にした細い棒で一番前に置いてある楽譜立てを叩くと、一気にみんなが楽器を吹くのをやめた。しんとした空気が広がる。 「じゃあ、今日ははじめから最後まで通そうか」  仙人が棒を振り上げると、みんながばっと楽器を構えた。仙人が棒を振り上げるのと、すうっ、と何人もの息を吸う音がぴたりと合った。  パパパーン、と華やかな曲がはじまる。なんか聞いたことあるな、と思った。テレビで流れていたのかもしれない。ぼうっとしていると、根本先輩が「楽譜っ楽譜っ」とささやき声で言っている。はっとして目線を楽譜にもどしても、もうどこなのか分からなかった。私はぽかんとして、終始立ちっぱなしだった。  パーカッションパートの人たちは、根本先輩以外は、あちこちに移動して、色んな楽器を担当しているらしかった。かなり忙しそうだ。根本先輩は、ティンパニーの三つある太鼓を操っている。     
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