3、はじめての部活時間

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 そうやって周りを見ている間に、あっという間に曲は終わっていた。唖然としていると、仙人がこちらを見て、にこりとしたように見えた。軽く会釈をする。何も、出来なかったな。でも、仙人は責めていないと、そのちょっとした笑顔で分かって気が楽になった。これは、結構練習しないと無理そうだなぁ。これからの道のりを思うと、ため息が出た。  家に帰って、もう一度楽譜を眺めてみた。作曲者名は外国の人の名前になっていて、あの写真のおじさん、成木先生の曲ではないことがわかる。でもきっと有名な曲なんだと思った。  CDをパソコンに入れて再生した。また、パパパーンと華やかに曲がはじまる。 「えっ、ちょ、ちょっと待った」  慌てて停止ボタンを押した。楽譜が全然追えない。もう一度、最初から再生する。  今度は途中まで追いかけることができた。途中で休みの場所が多くて、数えているうちにまた分からなくなってしまった。  もう一度、やり直し。何度か再生を繰り返して、段々長く追いかけられるようになってくる。 「この記号のところで、叩くってことだよね」  手を叩いきながら、次は楽譜を追ってみた。 「おぉ、それっぽい」   CDの中で鳴っている、大太鼓の音を見つけられるようになった。出来る気がする。親にご飯だと呼ばれるまで、時間を忘れて熱中して繰り返した。
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