4、上手くいかないこともある

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「最近付き合い悪すぎない?」 友美に呼び止められたのは、急いで音楽室に向おうとしていた放課後だった。話しがあるなら、昼休憩の間にしといてほしかった。放課後は時間が惜しい。少しでも早く練習しないとなのに。そんないらつきが顔に出たのかもしれない。友美は髪をくるくると指で触っていた。 「今日は行くでしょ、遊びに」 「ごめん、今日も行かない」 「なんなの、こそこそこそこそして! 私たちと遊ぶのがそんなに嫌?」 「そうじゃないよ。やりたいことが出来ただけ」  私はいまだに、吹奏楽部に入部したことを友美たちには言えていなかった。なんとなく気恥ずかしさもあったし、続けられるかも分からない。まだ、なるべく自分の中でとどめておきたいような気がしていた。 「彼氏できたら男を取るタイプだよね、ヤコって」  なんだそりゃ、とため息をつく。友美は「もういい」と言って、教室に戻って行った。  あぁ、まずいな。傷つけたな。そう思っても、フォローしに戻るのがめんどうくさかった。本当ごめんと思う。今の私は、あの太鼓を叩けるようになるので精一杯なんだ。明日、またちゃんと話そうと、教室には背を向けた。
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