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今日の合奏は、昨日よりもひどかった。日に日に、私がここに居ていいのかという気持ちが強くなる。曲を壊してないか、心配は消えない。大太鼓を鳴らさないと、どこか合奏が締まらないのも分かっていた。音源では、大太鼓が鳴ることで、リズムが生まれてめりはりが聞いていた。でも、どうしても音を出すことが怖かった。
鳴るべき音が鳴らないのを不審に思うのだろう。前に座って楽器を吹いている人達の中には、こちらをわざわざ振り返って見て来る人までいる。分かってるよ、私じゃだめなことくらい。
そそくさと楽器を片付けていると、室伏さんが話しかけてきた。
「今日、クラリネットのパートリーダーが来てるから、挨拶してって」
「あ、うん」
ついて行くと、クラリネットを吹いている髪の長い女の人がこちらを振り返った。化粧が濃いい。ギャルっぽかった。遊んでた私よりずっとギャルな感じ。パートのトップなんだから三年生だ。先輩だろう。
「あのぉ、三島です」
言って、ぺこりとお辞儀をする。室伏さんがすかさず、「この前話した、二年の新入部員です」と紹介してくれた。
「あぁ、あなたがか。よろしくね」
にこりともせずにその人は言った。ちょっと怖そう。
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