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「今は、パーカスでお世話になってます」
「そうだね、コンクール終わるまではね。あ、でもクラは練習はじめといてもいいかな。ねぇ」
ギャルは室伏さんに同意を求めた。
「そうですね、分かりました」
それで会話はおしまいだった。「じゃ、そういうことで」とギャルはさっさと楽器をケースに収めると、音楽室を出ていった。
室伏さんの顔をうかがう。ふう、と室伏さんは息をついた。
「明日までに、余った楽器で使えそうなやつ探しとくね」
「えぇっと、誰に教われば」
「多分、私が教えることになる」
淡々と室伏さんは言った。
「なんか、ごめん」
忙しそうなのに悪いなと思ってしまった。実は、私が入部することって迷惑だったのだろうか。さっきのギャル先輩の態度にしても、歓迎しているようには見えない。
「えっ、謝らないでよ。大丈夫だから! 私教えるのは得意だよ」
首をかしげてにこりと笑ってくれた。でも、本心は分からない。
室伏さんは、いつも優しいから。なんだか室伏さんの、手入れしているのか分からないぼさっとした髪や、上まで止めたシャツのボタンが、今日はやたらといらいらしてしまう。
頑張ろうと思っていた気持ちが、急にしぼんでいくのを感じた。
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