1、オレンジの音楽室、写真のおじさんとクラスメイト

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「中学から、やってるの?」 音が途切れたときに聞くと、室伏さんはぷはっと口を楽器からはずした。 「そうだよ。中学ではじめて、この高校の吹奏楽部に憧れて入ったの。この学校は、成木作品で有名だから」 「え、何?」 「成木先生の曲を、この学校よく演奏するの」  さっき私が見ていた、おじさんの写真を室伏さんは指さす。 「成木先生は、有名な作曲家でね。昔ここの顧問をやっていたんだって。だから、今でも成木先生の曲は、この高校の十八番なの」  おじさん、先生だったんだね。黙ってまた写真を見つめた。  室伏さんは、水を得た魚のようにうきうきと話を続ける。 「中学のときに、コンクールで他の学校が成木先生の曲を弾いていてね、それでほれちゃったんだ。すごくいい曲がたくさんあるんだよ」  こんなにぺらぺら話す子だったんだと、私はおじさんの写真から、室伏さんに目を移した。室伏さんは、頬を少し赤くして、目をきらきら輝かせている。まるで恋でもしているみたいだった。 「今度、演奏会があるから聴きに来て!」  チラシとチケットを渡された。興味、ないんだけどな。そう思いつつ、もう一度おじさん、成木先生とやらの写真を見上げる。やっぱりおじさんは、難しそうな顔をしてじっと楽譜を見つめるばかりだった。
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