1、オレンジの音楽室、写真のおじさんとクラスメイト

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 次の日の朝。私は音楽室を訪れた。月曜日の学校は、人気がなくまだしんとしていた。部活の朝練もやっていないみたいだ。音楽室も、何十年も放置されていた場所みたいな静けさをたたえていて、ほこりがふわふわ朝日に照らされているのが見えた。 「おじさん、すごいじゃん」  そんな静けさを壊さないように、そうっと白黒写真のおじさんに話しかける。おじさんは今日も無言のまま、楽譜を見つめている。 「あれ、三島さん」  前の扉から入って来たのは、またもや室伏さんだった。 「おはよう」  少しバツが悪くなりながら、とりあえず挨拶でごまかす。 「おはよう。何してるの」  聞かれて一瞬迷ったけど、正直に言うことにした。 「昨日、演奏会すごかった。おじさんの曲」  写真を指さすと、室伏さんは慌てた。 「だめだよ、三島さん。おじさんなんて。成木先生、だよ」 「成木、先生か」  私も室伏さんにならって、先生と呼んでみる。  室伏さんも私の横に並んできて、二人でおじさんの写真を見つめた。 「私、成木先生のこと、もっと知りたいかも」 言うと、室伏さんの顔はぱっと明るくなる。演奏会のときのような、きらきらした顔。 「そう! いいよね、成木先生の曲! 一緒に演奏しようよ」  手を握られて、どきりとした。一緒に演奏する? 私が? 「でも、私音楽には興味ないし」 「いいんだよ。だって成木先生には興味あるんでしょ」  他の曲には興味なくてもいいんだから、と室伏さんは言い切った。
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