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とは言え、自宅の稲本団地からアフレコスタジオや事務所がある都内へ向かうには充分時間がかかってしまう。母でありマネージャーでもある遙香の協力が不可欠なのだが、現在彼女は父の英明と共にハワイへ旅行中だ。
これは朱理から提案した両親へのプレゼントだった。
朱理たち家族はもともとこの稲本団地に住んでいたのだが、一昨年の十月から母と妹の紫織、そして叔父の鬼多見悠輝と愛犬の梵天丸と一緒に遙香の実家で生活していた。
別に両親の間にトラブルがあったわけではない、むしろトラブルがあったのは朱理の方だ。
朱理には母方の遺伝でいわゆる超能力がある、しかし顕現するのが遅く自分自身でもその存在に気が付かなかった。
この異能の力を鬼多見家では験力と呼び、験力は魔物を引き付ける。朱理の験力に引き付けられた魔物のせいで大切な友達が傷つき、生命を落とした。
験力は朱理だけではなく紫織にもある、しかも潜在的に妹の方がはるかに強い。このまま紫織が覚醒すれば朱理以上の大惨事を引き起こすかもしれない。
悠輝と遙香は今まで一度として帰らなかった祖父、鬼多見法眼の許で朱理と紫織を修行させる決断をした。
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