稲本団地

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 琴美はヒロインで、炎の超能力(パイロキネシス)を使う。 「ううん、違う」  刹那は驚いた顔をした。 「え? それじゃ……」 「昴!」  朱理も思わず笑みがこぼれた。 「ウソッ、男の子役じゃない! 永遠、だいじょうぶッ?  まぁ、琴美だって前半悪役だから簡単じゃないと思うけど」  刹那は心配そうに眉根を寄せた、初の男子役で主役なのだから無理もない。 「うん、自信があるわけじゃないけど、ズッとやってみたかったから」  朱理の言葉に刹那は呆れたような顔をした。 「言っていることと顔が逆、あんたとっても自信に満ちた顔をしているわよ」 「えッ? そ、そう?」  いつも自信が無いと思っているので自分でも驚いた。 「いいんじゃない? 謙虚さは美徳だけれど自信だって大切だからね」 「うん」  刹那は朱理をギュッっと抱きしめた。 「おめでとう!」 「姉さんもおめでとう!」  二人が喜んでいると声が気になったのか、奥の部屋からクロシバが飛び出して来た。 「ボンちゃん、見て! オーディションに受かったよ」  スマホの画面を梵天丸に向けると、彼は首を傾げて画面をしげしげと見つめた。  そうだ両親と叔父、それに祖父にも知らせないと。 「じゃあ今夜は何か美味しい物でも作りますか!」  刹那が腕まくりをする。     
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