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智羅教道場
鬼多見悠輝は眼の前にずらりと並んだ智羅教の信者たちを見て思わず溜息が出た。
またか……
彼は今、つくば市にある智羅教道場の前にいる。
智羅教は新興宗教に違いないが四十年近く前からあり、陰陽道の影響を強く受けた神道系の宗教団体だ。小規模の宗教団体で施設もこの道場以外は無い。
息子を脱会させて欲しいと母親から依頼され、風光明媚なこの場所まで来た。信者たちは悠輝を追い返そうと施設の入り口を人の盾で塞いでいる。
いつも結果は同じだ、そもそも自分はこの手の仕事に向いていない。むしろ姉の遙香や法眼の方が向いている。
あの二人なら験力で信者の心を操ってちょいちょいっと解決できるが、悠輝はその手のことが苦手だ。三、四人までなら何とかなるが、五人を超えるとさすがにキツイ。
できることなら関わりたくないが、家族がカルトに入信して助けを求めてきた人たちを無視することもできなかった。
ことの発端は一昨年の夏、姪を拉致したカルト教団アークソサエティを壊滅させたことだ。
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