智羅教道場

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 この一年、月に一、二件は依頼が来る。コールセンターで鍛えたトークスキルを活かして交渉するが、相手は狂信的で偏見に()り固まっている。会話にすらならないことも珍しくない。  そして話しが解る奴らにとって信者は労働力であり、金づるであり、虚栄心を満たしてくれる奴隷だ。そう簡単に手放しはしない。  となると悠輝が採れる方法は一つだけ、力尽くでの奪還だ。そこで大立ち回りを演じたせいで潰した教団は片手の指では足りない。もちろんアークソサエティのような大規模な組織ではなく小さなものばかりだ。 「君が『カルトつぶしの幽鬼』か」  建物の中から一人の老人が出てきた。  他の信者が黒っぽい()()()のような物を着ているのに対し、この老人は(じよう)()(まと)っている。  因みに『カルトつぶしの幽鬼』というのも、雑紙に掲載されたキャッチコピーだ。   蛇みたいなヤツだな。  悠輝は老人を値踏みするように見た、顔が蛇に似ているというよりも全体の印象が蛇だ。  この手の老人は気に入らない、タイプは全く違うが鬼多見法眼を(ほう)彿(ふつ)とさせる。 「雑紙で読んだ、宗教団体を潰しまわっているそうだな」  年齢は法眼よりも上か、こいつが智羅教の教主(つぼ)(うち)(げん)()だ。     
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