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しかし何やかんや言いつつ二人とも御堂永遠が出演したアニメを観てくれていて、由衣を失った悲しみから立ち直り、新たな道を進んでいる朱理を応援してくれた。
充実しているな。
幸せを実感する、不安が全くないわけではないが未来には希望の光が溢れている気がした。
カサカサ……
何かが近づく音が朱理の思考を断ち切った。
なに?
イタチか猫だろうか。この河原にはイタチやキジなどの野生動物はもちろん、朱理は母猫が小さな子猫たち七匹と一緒に丸まっているのも見たことがある。
でもこの気配……
動物の物ではない。
朱理はMTBを止めた。このまま稲本団地にまで連れては行けない、ここで決着をつける。
バイクから降り、辺りの気配を探る。
朱理は周囲が異様に静かなことに気付いた、風の音もしない。
魔物……?
今は自分一人しかいない、はたして魔物を斃せるだろうか。
でも、やらなくちゃ!
いつまでも叔父たちに頼ってはいられない、自分と自分の大切な人たちを守る力が欲しくて戌亥寺に修行へ行ったのだ。まだまだ未熟だがそれを言い訳にはできない。
眼を閉じて精神を研ぎ澄ます。
そこだ!
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前、破ッ!」
九字を切り魔物の気配がするところに験力を放つ。
それと同時に草叢からイタチに似たモノが飛び出した。
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