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全身が赤黒く爪と牙が黄ばんでいる。
朱理は紙一重で攻撃を躱した。いや、デイパックの肩紐が切られダウンジャケットも裂けた。
動きを妨げるのでデイパックを投げ捨てる。
「ヒートブレイド!」
右掌から伸びた炎の刃で魔物に斬り掛かる。
刃が届くより早く魔物は草叢に逃げ込んだ。
炎の刃を構え直し再び辺りの気配を探る。
来る!
飛び出して来た魔物を斬りつけようとする。
と、その時、背後に別の気配を感じた。
とっさに地面に倒れて素早く転がり距離を取る。
立ち上がり相手に視線を向けた。
魔物が二体に増えている。どちらも赤黒くイタチに似た姿たが二回りは大きい、小型犬ぐらいの大きさがある。
一度に魔物が二体……
背筋が冷たくなる、魔物と独りで対峙すること自体初めてなのに相手は二体だ。
負けない!
朱理は背後を振り返り、炎の刃で薙ぎ払った。
ギャヒッ!
という叫び声が頭に響く。
三体目の魔物が地面に転がる。
まだ斃せてはいない、そいつは牙を剥いてこちらを睨んだ。
魔物は霊的存在で、普通はある程度の異能力がなければ視ることも声を聞くこともできない。
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