新川土手

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  どうする……  不動明王呪は強力な炎を呼び出せるが、その分験力を消耗させる。この状態から攻撃をできれば勝ち目があるが、朱理にはそれだけのスキルがない。使える呪術は一度に一つだ。  つまり魔物を攻撃するには炎の壁を消さなければならない、そうすれば間違いなく魔物は襲ってくる。四方からの攻撃を(かわ)しつつ攻撃する技量も朱理には無かった。   でも、やるしかない……  どちらにしろもうすぐ験力は尽きる、そうすれば確実に魔物に殺される。  朱理は大きく深呼吸をした。   レディ……ゴーッ!  炎の壁を消すと、朱理は身を翻して後ろに飛び出した。  待ち受けていた魔物も同時に飛び掛かる。 「ヒートブレイド!」  両掌から炎の刃を伸ばし、後ろにいた二体の魔物に斬りつけた。   グギャッ!  一体には見事刃が命中した。が、一体は避けられた。 「キャッ!」  朱理の口から悲鳴が漏れる、背後の魔物に襲われたのだ。  うつ伏せに押し倒され、肩に鋭い爪が食い込む。 「うぅうう……」  痛みに呻き声が漏れる。  クワァー!  一体の魔物が口を大きく開け、朱理に噛みつこうとした。  と、その時、 「ガルルル!」  (うな)り声と共に黒い弾丸が魔物たちを蹴散らした。     
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