新川土手

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「ボンちゃん!」  思わず笑みがこぼれる、梵天丸は今までに何度も朱理のピンチを救ってくれたヒーローだ。  彼は普段の愛くるしい仮面を脱ぎ捨てて、牙を()き出し瞳をギラギラと輝かせている。朱理を傷つけた魔物たちに怒りを燃やしているのだ。  朱理は痛みに耐えて立ち上がり()(たび)炎の刃を構える。  一体は動けないようだが、残り三体の魔物が彼女と梵天丸を取り囲む。  魔物がまた間合を少しずつ詰めてくる。  梵天丸は低く唸り声を上げながら動かない、しかし彼から強い()()()を感じる。梵天丸はただの柴犬ではない、験力を持つ霊犬だ。  ついに弾かれたように魔物たちが襲い掛かってきた。朱理に二体、梵天丸に一体。  朱理と梵天丸も動く。朱理は自分に向かってきた一体の相手をし、梵天丸は自分に向かってきた魔物と朱理を襲おうとしたもう一体を凄まじい速さで攻撃する。  一刻も早く眼の前にいる魔物を(たお)して梵天丸を援護したい、その思いとは裏腹に朱理の攻撃は(ことごと)く避けられている。  激しく攻撃しているので魔物も彼女を攻めあぐねている。     
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