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距離があるのではなく坂が多いのだ、しかも周りは鬱蒼とした森になっている。ここが新宿からわずか一五、六㎞しか離れていないとは思えない。
一月下旬の現在、寒さが本格化している。
春になったらのんびり花見がしたいなぁ。
ふとそんな思いが頭をよぎる。だが桜が咲く頃は、四月から始まるアニメの宣伝のためにイベントやネット番組出演の予定が詰まっている。
とはいえ、せっかく大学生になったんだから思い出も作りたい。来年はみんな就職も決まって花見どころではないだろう。
プロなんだから、そこは割り切らないと……
自分を戒めていると、美優は何かの視線を感じた。
立ち止まり辺りを見回す。
誰もいない。
猫か狸だろうか、それともハクビシン? 生田緑地には野生動物が結構いる。その中には外来種もいるので、ひょっとしたらアライグマかもしれない。
何度かあったことなので気にせず美優は歩き出した。
今度は何かがついてくる気配がする。
振り向いたが何もいない。
犬か猫がついて来ているのだろうか、美優は来た道を戻り物陰を探してみることにした。
この寒い時期、子犬や子猫がついて来ているとすれば放っては置けない。
彼女は動物好きで家にも猫が二匹いる、いかにも日本の猫といったチャトラとミケのコンビだ。
もう一匹ぐらいなら何とかなるだろう。
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