65人が本棚に入れています
本棚に追加
/162ページ
周りから「よッ、エレン!」とか「さすが酒豪声優!」などのかけ声が上がる。
彼女はVサインで応えた。
姉御肌のエレンは後輩だけではなくスタッフからも人気がある。
舞桜は他に追加注文がないか周りに確かめた。
ふと見ると事務所の後輩で今回のヒロイン役である尾崎佳奈が、浮かない顔をして黙り込んでいるのに気付いた。
店員に注文を伝えると佳奈の隣に移動する。
「飲んでる? って未成年だから『飲んで』はいないか。オレンジジュース美味しい?」
明るく話しかけると、慌てて佳奈は笑顔を作った。
「はい……緊張してしまって……
こういう時、どうしたらいいですかね、先輩?」
佳奈は舞桜と同じ福島県出身で、それが切っ掛けで親しくなった。彼女は舞桜より二歳年下の十九歳で、昨年上京して舞桜と同じ事務所『ミケプロ』に所属した。
所属して半年も経たないうちにアニメのオーディションで主役に選ばれ、それからも連続でヒロインやレギュラーに合格している。
「ナニ言ってんの今さら! こっちが聞きたいよ、お姉さん、レギュラー久しぶりなんだからッ」
この言葉に佳奈はハッとしたように眼を見開いた。
「すみません……」
真面目な顔になりうつむいた。
最初のコメントを投稿しよう!