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ネ コ
――とてもきれいなところなの
はじめてその国を訪れたネコは、雪と氷に包まれた風景に感動しました。
遠くに見える氷のお城がとくにすばらしく、ネコはそこに行ってみたいと歩みを進めました。
お城までの道中、ネコは幾重にも布を巻いて、小柄な身体を丸くした少女に出会います。
「こんにちは、とてもきれいなところですね」
突然話しかけられたことに戸惑いながらも、少女はつまらなそうに返事をします。
「綺麗? この雪と氷しかない国が?
たしかに表面だけみれば綺麗なのかもしれないわね。でも最悪よ」
少女の言葉にネコは驚きます。
「この国は太陽の恩恵が弱すぎて、ろくに植物が育たないわ。だから食べるものがないの。
あたしのお母さんは栄養が足りなくて、産まれてくるはずだった妹と一緒に死んでしまったわ」
「こんなにきれいなのに」
「それだけじゃ、人間は生きてけないのよ」
「いまはわざわざ余所の国から食べ物や燃料を買ってるの」
それはたいへんだろうと、ネコは一生懸命に考えます。
「それってなんとかできないのかな?」
「さぁ、この国の女王に頼めばどうにかなるんじゃない。
おばあちゃんの話じゃ、この国にも弱くても夏というものがあったのに、女王が即位してからはなくなったって話だから」
「じょおうさまはどこにいるの?」
少女はあごで行く手を示します。
そこにはネコの目指していたお城がそびえていたのでした。
「だったら、ネコがじょおうさまにあって、たのんでみるの」
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