503人が本棚に入れています
本棚に追加
「やはり、同業では真一さんが社長の地味な姪とお見合いをして付き合っていると言う噂が広がっていたんですね。それもお金目当てだとか言って」
結衣さんがその噂をムキになって確認した。隆一はその噂を否定はしなかった。結衣さんはそれでますます感情的になった。
「結婚式では前の絵里香よりもずっとずっと素敵な女性に変身して、その噂話を打ち砕いてやります。誰よりも大切な真一さんが侮辱されました。絶対に見返してやります!」
「まあ、まあ、そう興奮するなよ、そんな結衣さんを初めてみた。俺のためと言ってくれるのが嬉しい」
「おいおい、二人でのろけ合っていないで、俺に頼みってなんだ」
「結婚式の司会を頼みたいんだが、引き受けてくれないか?」
「喜んで引き受けるが、条件がある。俺に友人代表の挨拶もさせろ、それが条件だ。おまえも俺の結婚式では友人代表で挨拶しただろう。だから俺にもさせろ!」
「分かった。司会と友人代表の挨拶をお願いしたい」
「承知した」
それから3人でこれまでのことを思い出しながら話をした。隆一は俺の店のことを心配してくれていて、ときどき電話をくれていたし、経営の相談もしていた。隆一は俺たち二人の婚約を心から喜んでくれた。
二人の新居は駅裏の新築のマンションを購入することにした。俺の前の会社の退職金を頭金にしてローンを組んだ。ここにいれば、駅の土産物売り場の売れ具合と他店の状況が毎日手に取るように分かる。結衣も賛成してくれた。
最初のコメントを投稿しよう!