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結婚式の当日、朝から俺は落ち着かない。親父とお袋と3人で会場に着いた。結衣さんはもう到着しただろうか?
着替えを終えて新郎の控え室にいると、隆一が司会の最終確認に来てくれた。2日前に最終打合せは終えていた。
そこへウエディング衣装姿の結衣さんが母親に付き添われて挨拶に入ってきた。綺麗だ! 久しぶりにあの絵里香になっていた。あの時よりも今日は憂いがなく明るい感じがしてもっと綺麗だ。しばらく見とれた。なぜいつもこうしていてくれないのだろう?
隆一も久しぶりの絵里香の様相をじっと見つめていた。「結衣さん、とっても綺麗だね」と言っていた。
親父は綺麗になった結衣さんをじっと見ている。そしてとうとう思い出した。
「あのとき真一が俺たちに紹介したお嬢さんじゃないのか?」
「そうです。お気が付かれましたか?」
「親父、やっぱり気が付いたか、あの東京のマンションで紹介した石野絵里香さんがこの白石結衣さんです」
「真一、なんであのときチャンと話さなかったんだ?」
「それは・・・・・」
「あの時も驚いたが今はもっと驚いた」
「そうだったのか、結衣さん、どうか真一のことよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「母さんは驚いていないけど気が付いていた?」
「ええ、私はすべてを知っていました。ねえ結衣さん」
そう言われて結衣さんは微笑んで頷いていた。母がこれまでのことを話してくれた。
あれから親父と帰ってから、すぐに東京の知人に興信所を紹介してもらい、我々二人のことを調査してもらったそうだ。
そして紹介された石野絵里香と同居している白石結衣が同一人物であることも分かったという。
二人の監視を依頼しておいたところ、結衣さんが俺の出張中に転居し、その転居先がここで、しかもあの菓子店の社長の姪であることが分かったそうだ。
それでお袋は直接結衣さんに会いに行ったとのことだった。結衣さんがあの時紹介された石野絵里香が自分だと認めたので、同居からのいきさつを聞いて、もし息子がここへ帰ってきたら結婚してもらえないかと頼んだと言う。
俺が帰ってくるまで2年もかかったが、帰ってくるとすぐに二人を見合いさせたということだった。俺が結衣さんと同居しているからといってなかなか帰ろうとしないことも、早く帰るように催促していることも結衣さんに知らせておいたという。
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