26.結婚式の日、まず俺が驚いて次に皆が驚いた!

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「私しか知らないお二人の馴れ初めのお話をしたいと思います。皆様は当地でお見合いをされて、めでたくご結婚に至ったとお聞きでしょうが、実は違うのです。こうして結婚されましたが、実に運命的な出会いがあったのです。 新郎が東京で働いている時にお父さまのマンションに引っ越しされましたが、維持費が高くつくというので同居人を探していました。たまたま新郎の置き忘れた会社のマル秘資料を届けたのがきっかけで、当時契約社員であった地味な新婦と同居雇用契約をして同居を始めました。こともあろうか、私がその契約の立会人でした。 二人の名誉のために申しておきますが、同居している間、二人にはいわゆる男女の関係は全くありませんでした。ただ、二人で生活したことでお互いの気持ちがどんどん近づいて行きました。ご両親がお見えになった時に、新郎はこのように可愛く変身させた新婦を紹介しました。 ところがお父さまに猛反対されて、その後新婦は行方をくらましてしまいました。失意の新郎は家業を継ぐことを決意して、ここへ戻ってきたのは皆さま、ご存知のとおりです。 そしてすぐにお見合いの話があって、その相手が何と行方知れずの新婦だったのです。二人とも同郷であることを知りませんでした。何と運命的な再会だったでしょう。 それからは皆さまの知ってのとおりです。どうか皆様、このお二人の運命的なご結婚を祝福していただきたく、親友として心よりお願いする次第です。これで挨拶を終わります」 会場から、どよめきと拍手が続いた。さすが隆一、とても心の籠った挨拶だった。話を聞きながら、その当時のことを思い出していた。隣の結衣さんも同じだろう。 披露宴は順調に進み、新郎新婦のお色直しもした。お色直しの新婦はまた眩しいような美しさだった。再入場してキャンドルサービスをして歩く間、俺は誇らしげだったに違いない。結衣さんも凛とした美しさに満ちていた。 結衣さんが泣きながらお袋に花束を渡していた。結衣さんはお袋の心遣いがとても嬉しかったのだろう。滞りなく披露宴は終わった。 ************************************ 2次会は社員が工場の会議室でしてくれることになっていた。5時に二人はタクシーで会場に到着した。
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