505人が本棚に入れています
本棚に追加
マル秘資料を見られたこととは別にとっさに良いことがひらめいた。ここしばらく悩んでいたことの解決策が見つかった。
「白石さん、折り入って相談したいことがあるけど聞いてくれないか?」
「相談って、業務に係わることですか?」
「いや、プライベートなことだけど、これも秘密厳守でお願いしたい」
「いいですが、相談にのれるかどうか分かりませんが、聞くだけでもよろしければ」
「それでいいから、今日仕事はいつごろ終わる?」
「6時ごろには終わると思います」
「それなら6時から1時間、21階のC会議室をとっておくから来てもらえないか?」
「分かりました。丁度6時とお約束できませんが、いいですか」
「それでいいから待っている」
「お伺いします」
俺が相談したいと言ったら断る独身の女子社員はいない。そう思っていたが、彼女も断らなかった。きっと提案も受け入れる。そう確信した。
俺の会社の勤務時間は9時から5時までだが、いつもは7時ごろまでは仕事をしている。まあ、サービス残業と言えるかも知れない。7時以降までかかる時には超過勤務を申請している。
今日は6時少し前になったので予約しておいたC会議室へ向かう。C会議室は小さな机が入った4~6人で会議する小部屋だ。5時以降でも各会議室は結構使われていて、相談するなら社外でするよりもこの方が目立たない。
6時丁度に着いたが、まだ彼女は来ていなかった。5分ほどして落ち着いた様子で、彼女が現れた。喜んでいる様子もなく至って冷静だと見た。
「遅れてすみません。コピーを頼まれたのですぐには出られませんでした」
「もう仕事は済んだのですか?」
「はい、帰り支度をしてきました」
帰り支度とはいうものの昼間にあった時の服装とほとんど同じに見えた。髪は後ろに束ねてポニーテイルにしている。赤い縁のメガネは結構厚いので、かなりの近眼みたいだ。化粧していないのかと思うほど化粧も薄いし、口紅も薄い。正に色気のない地味子で、頼むにはうってつけの女子に思えた。
最初のコメントを投稿しよう!