白いものに迎えられ…

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白いものに迎えられ…

陽を見ない日が続くと、 雪景色を思い出す この地は降らないから、 余計にその日を思い出す。 車で移動中に、 目的地まであと少しと言う場所で もう海も近く吹きっ晒しの風の中、 真上と言うより真横に流れて居た。 先を急ごうとしたが、 タイヤに気を取られる 積雪の仕様では無いから、 滑らないか心配して進む。 ヒヤヒヤしながらも、 この先には坂道がある 生憎積もってはいないが、 ハンドルを握る手が汗ばむ。 上りも下りもスローダウン、 日本とはとても長細い地形と 感じる瞬間になる、 雪が降らない地の人は尚更だ。 やがて目的地へ、 やっと到着し胸をなでおろす 待ち人未だ来ず、 暫く降雪の中の車に一人きり。 待ち人が到着したとその時、 降雪の空が明るくなり ボタ雪に変わった、 初めてのボタ雪に感動と心細さ。 冷たいとか濡れるとか、 童心が先走り外へ出る 口を大きく開け食べてみた、 自然の味ボタ雪の味だ。 無味のボタ雪も、 澄んだ乾いた空気の中では 待ち人のいたずらに思えて、 妖精であり雪の使者に見えた。 降雪はこの日だけ、 帰り際には青空になり 雪の姿も積もらず消えていた、 そしてぼくも… 妖精であり雪の使者の前から消える時 何も言わずその場を立ち去った。 あれからタイヤを雪仕様にした、 その後何度か訪れた地には 雪が降らなかった、 やがて妖精も雪の使者も… 目の前から居なくなった。 雪景色やこの季節には思い出す、 ボタ雪の使者と妖精の事を 遠い遠い地の、 遠い遠いある年の出来事だった…
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