第一術【REPLAY】

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 これは、魔法の国のお話。  誰も知らないような世界の隅に存在する、不確かで不明確で不思議な御伽噺。  時空の狭間を行き来することが不可能だと言うのなら、それは諦めるしか無いのかもしれないが、所詮、狭間は狭間でしか無い。  つまり、狭間にハマってしまえば、そこから抜け出すことは出来ない。  生きるということは、時間の流れに従うということで、死ぬということは、時間の流れを受け入れることを止める、ということだ。  何にせよ、この世界、この空間、この時代、この空気は、人によっては現実であり、人によっては幻想である。  人によっては真実であり、人によっては偽りである。  人によっては口実であり、人によっては理由である。  この世界も同じだ。  人によっては喜劇であり、人によっては悲劇である。  人によっては遊具であり、人によっては逃避である。  人によっては退屈であり、人によっては興奮である。  遠い遠い、風でさえも、光でさえも、何千年とかかるであろうその時代に、その世界は存在している。  そこに住んでいる人達はみな、神秘の力を持っていた。  それは、いつしか広まる“魔法”という言葉と同等のものであり、まさしく、そのものかもしれない。  魔術でもあり、呪術でもあり、仙術でもあり、妖術でもあるその力は、偉大だ。  魔法という力を手に入れた者達が、生きる場所こそが、何よりも気高き孤高の舞台『魔法界』であり、今尚、実在する。  その日は、よく晴れていた。  異変を察知したときにはすでに手遅れで、魔法界で生活している者たちのほとんどが拘束され、捕まっていた。  「なんで魔法が使えないんだよ!?」  「海斗落ち着け」  「そんなこと言ってもねぇ。手も足も出ないって感じだね」  「ソルティは落ち着きすぎかな」  魔法が使えない状態ではどうすることも出来ず、ナルキたちも拘束されていた。  魔法が使えないのは空也も同じはずなのだが、空也だけはなんとか耐えていた。  どうして空也だけは大丈夫なのかと聞かれても、実際本人は決して大丈夫な状態ではなく、魔法を使わずして城にあった適当な武器でやりあっていただけだ。  「くそったれ!」  「大人しくしててくれれば何もしない。そのままお仲間と一緒に掴まってくれよ」
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