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僕の意識は溶けたビョルンと混じり合って、やがて見えなくなった。
ひんやりした風に気がついて、僕は目が覚めた。
「あれ……、夢だったのか、まあ夢じゃなきゃおかしいけど」
でも僕は、木の根のごつごつしたところで、幹に寄りかかっていた。
ビョルンがいきなり現れたのは、向こうの土手のほうだったから、眠りながら歩いてきたのだろうか。
「枝から落ちたけど、どこも痛くないな」
僕は傍らの自分の鞄を確認した。
「やっぱり夢だな」
自分を納得させて、とりあえず家に帰ることにした。
まだ陽は高く、初夏の匂いが僕を追って、産毛みたいにくすぐっていく。
家の近くの道を歩いていると、ゴミステーションが目に入った。
「やっぱり夢じゃなかったか」
燃えないゴミが積まれていたのだが、そこにビョルンが被っていたウサギの被り物とそっくりのものが捨てられていた。
僕が長い間抱えていた物語が終わって、始まるのを、感じた。
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