兄を待ちながら

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兄を待ちながら

思えばさっき、匂いがした。 兆し。アスファルトから香る雨が降るまでの『覚悟』の時間。 で、結局これである。 目の前でダイナマイトが爆発したかと思った。 アニメでよく見る、どかーーん、ってやつ。 お気に入りの白のワンピースが一瞬で、迷彩模様によく似た柄へと変わる。 全身を鮮やかにコーデしてくれたのは、目の前を猛スピードで走り去った車。 弾き飛ばばされた、水たまりの泥だと気づいたのは、6秒たったあとのことだった。 突然の大雨。 テレビは「降水確率が20%」とたしかに言っていた。恨むぞ。どこのチャンネルだか忘れたけど、朝の情報番組。 全力で走り、屋根付きのバス停へと転がり込んだ。 眼鏡ごしの視界が、どんどん水滴に浸食されていく。 降り出した雨が、豪雨になったのは一瞬だった。 だからきっと止むのも一瞬だろう。 そんな希望的観測を頭に思い浮かべながら、ハンカチで眼鏡を拭い、かけなおす。 雨音が、大都会からちょっと外れただけのこの場所を、とても孤独なものに感じさせた。 空がパシャッとフラッシュする。少し遅れて雷の音が一度だけ鳴った。 思考が、悪いほうへと傾く。 ああ、せっかくの土曜日が台無しだ。     
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