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「よく今まで、お一人で耐えて来られましたね」
もう何曲目か分からない。
単純に俺はその歌唱力を
ステージを見るように感嘆していた事に気付き、
これから一緒に音楽をやるパートナーとして
頭を切り替えた。
「耐えられなくなったから、一歩、踏み出したんです。初めて自分の歌を知らない人に披露しました」
「・・・俺が初めてなんて、光栄です」
「友達にはね、一回やったんですよ。めちゃくちゃウケましたけどね」
「ここまで歌えて、これ以上を求めたら、そりゃこんな狭い部屋じゃ無理に決まってる。息苦しいんじゃありませんか」
「苦しいというか悔しいというか。でもこんないい年になってカラオケしか知らないボーカルなんて、おこがましくて何処にも出れませんよ・・・。あんまりにも拓真さんと感性が似てたから、思い余って連絡とってしまいましたけど、本当は普通の主婦のままで我慢してくつもりでした」
普通の主婦・・・。
その姿が間違っている。
なぜこの人は結婚前に自分の才能に
気付けなかったのだろう。
こんな田舎の町でのんびりしてるには
あまりにも勿体ない。
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