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「良かった・・・、悪くなかったなら、本当に良かったです。実はめっちゃ震えてるんですよ、まだ」
そう言って彼女は、
ついさっきまでマイクを握っていた掌を
こちらに開いて見せた。
軽く握っていたと見えていた掌は
既に真っ赤に染まっていて、
手首の奥の方から小さく振動していた。
「時間は、今日ずっと空けてます。旦那が仕事の日を狙って指定させてもらったんで」
「すみません、じゃあ、たくさん聴かせて貰うかもしれません。次は、今みたいな直球のデスメタルじゃなくて、メロディのあるものをお願いしたいんですけど」
「・・・知ってる曲がいいですか」
「いや、マイナーな曲でも構いません。むしろ俺の知らない曲を歌って教えてほしい」
少し考えると彼女は
遠隔コントローラーを指先でスススと操り、
本体機に送信した。
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