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「どんなボーカルになりたいですか。いや・・・どんなバンドを求めてますか。俺は、人の心を掻き毟りたいんです。引っ掻き回されて俺は自分を知るきっかけになったと思ってるし。ボーカルは一番、その使命を負ってますよね?」
「使命・・・ですよね、確かに。伝えるって事が。ただ私には決定的に華がないので、ボーカルっていう立場には実は未だに迷いしかないんです。けどまあ・・・身を削るしかやり方ないでしょうね。自分の一部が飛んで行って、誰かに着地するイメージですから。たとえ何かを狙って歌詞とか作ったとしても、現在の自分しか伝わりません。多分、今の自分からは・・・・・・欲望しか伝わらないんじゃないですかね」
「欲望・・・ですか。それは、音楽への?」
「いろいろと、です。人に対する飢えとか」
「・・・・・・旦那さんがいらっしゃるのに?」
「アハハ、私とは何一つ被らないんですよ。悲しいほど。悪いクセでね、私、全然合わない人を選んでしまうんです。合わなくて合わなくてどんだけすり寄ろうともがいても、分かり合えない事が露呈するだけで」
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