3.日常に潜む異変

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「どいて、どいてくれ」  音だけが耳に届く。人混みをかき分けても、思うように前に進めない。  叫び声、笑い声、机が倒れるような音、悲鳴。何が起こってるんだ?  その瞬間、僕と四組を囲む人だかりの中から、わっと声が上がった。群衆が少し、後退する。僕はそれを機にするりと前進した。だがまだ教室の中は見えない。 「おい委員長!」  背後から藤見の声。アイツは背が高いから中が見えるのだろう、目を見開いて、酷く焦ったような顔をしている。いったいなんなんだよ、もう! 「なんだよ、藤見!」 「こりゃまずいんじゃねーか……。急いで止めねえと!」 「何が起きてるんだよ!」  僕が叫ぶ。藤見は目を覆うように、腕を自分の目の前で交差させた。 「やべぇよ……これ」 「あー、もう、なんなんだよ! だから僕が今、学級委員として事態の収束を図ってるんだろうが!」  叫ぶ。人だかりはもう、一歩も動かなくなっていた。なんだ?  やけに重たい沈黙が、鼓膜をくすぐった。僕は先を急ぐ。  制服がくしゃくしゃになりながらも、どうにか教室内に入ることができた。ボタンを止める暇もなく、室内へ目を向ける。そして僕は、文字通り絶句した。  なんなんだよ、これ?
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