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「い、委員長!」
クラスメイトが僕を見るなり叫んだ。
「助けてくれ。い、板崎を止めてくれ!」
惨事。クラスはもう、めちゃくちゃだった。
僕がこの目に映した光景、それはもう、本当に……。
机や椅子は至る所に散らばって、見ると窓ガラスもいくらか割れて、破片が少し飛び散っていた。それで怪我をしたやつもいるらしい、左腕を押さえてうずくまっている女子も見受けられた。
だがそんなのは軽傷だ。ここには、もっと重傷を負った人間がいる……。
クラスの中心に、倒れている生徒がいた。金髪の不良、赤上慎哉だろう。赤上は……。
「大丈夫か、赤上!」
僕は赤上に駆け寄って、激しく彼の肩を揺らした。反応はない。
「平気よ、息はあるわ」
「唯川……」
唯川が無表情で僕と赤上を見下ろしていた。
「赤上くんは腹を刺されたの、果物ナイフでね」
赤上の制服には、赤い血の染みが広がっていた。唯川の言った通りなら、刺されて出血したのだろう。意識はない。
そして……。
そして僕は、彼を見た。
赤上慎哉を刺したのであろう、赤いナイフを持つ、彼を。
板崎魁人。
板崎は、教室の隅でうずくまって震えていた。頬が赤く腫れ上がっている。ナイフは直ぐに手から零れ落ちて、地面を転がる。
「板崎……」
僕はようやく、事情を大体理解した。赤上が板崎を虐めたのだ。そしてそれに堪えきれなくなった板崎が、爆発。赤上を刺してしまった。
「唯川、他に怪我人は?」
「赤上くんと一緒になって板崎くんを虐めていた連中はみんな、逃げ出したから無事よ。でも下川さんと上谷くんが窓ガラスで腕と太ももを切って軽傷。他は全員無事」
「そうか……」
僕は頷いた。
「板崎、なんでお前、こんなこと……」
「わ……悪いのは俺じゃない! 分かるだろ! そいつが、そいつらが俺を殴ったから!」
板崎は足をじたばたと動かしながら、喚いた。
「これは、これは正当防衛なんだっ!」
僕は板崎にゆっくりと近寄る。板崎はびくっと震えて、ナイフを握り直した。
「やめろ、近寄るな」
「ナイフを離せ」
「分かったから!」
板崎はナイフを捨て、両手を広げた。僕は安心して、さらに一歩歩み寄る。その時だった。板崎が突然、右腕を大きく振りかぶった。
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