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保健室の天井をただ眺めていた。
ぼーっとしていると、意識がどこか遠くへ行ってしまいそうで、僕は天井のタイルのシミを数えながら、唯川凪咲について考えていた。
昨日、彼女は僕にクイズを出した。
四日後にクラスメイトの内の一人が、自殺すると言って。
僕は当然それを信じなかった。自殺なんてありえないと、そう思っていた。それはそうだろう、唯川の発言はあまりにも非現実的すぎた。
だが、今の板崎魁人には自殺の理由がある。今日のこの事件は、人生に絶望するのに十分なほど昏いものだったと言えるのではないか。
つまり、だ。
この事件は、偶然にしてはタイミングが良すぎるような気がしてならない。
僕は寝返りを打った。
他の候補者はどうだろう。藤見は……さすがにないだろう。あの明るく快活なバスケットマンが、自殺だなんてするはずがない。
ならもう一人の候補者、彼女は……。
保健室の扉が開く音がした。
「いいんちょー。いるー?」
聞き覚えのある声だ。僕はベット脇のカーテンを開けた。
「騒ぐな、他に病人もいるんだぞ」
「ああ、そうだったね。ごめんごめん」
「僕に謝るなっつーの……」
迎え入れて、隣の椅子に座らせた。甘くてくすぐったいような香りが、彼女のショートボブの茶髪から発せられた。僕は思わず目をそらす。
「で、何の用だ?」
「何の用だはないでしょう、委員長? お見舞いに来てやったんだっつーの」
彼女――葉宮涼香は唇を尖らせた。
葉宮はその明るく誰にでも優しい性格から、クラスでは男女ともに好かれている存在である。可憐な容姿も相まって、うちのクラスの男子の中にはファンも少なくないはず。そういや藤見も前に気になってるとかなんだとか……。
僕はちょっとした事情から、彼女とそこそこ仲が良かった。
「それはセンキュー。だが見舞いっつっても、怪我も大したことはないぞ」
板崎は非力だったからな。僕はやれやれとため息を吐いた。
「でも委員長学級委員だから、板崎くんがあのあとどうなったか気になるんじゃないかなーって思って」
僕は葉宮の顔を見て、ふむと頷いた。こやつ、なかなか気が利くみたいだな。
「まあな、話してくれ」
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