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君がそう言うだろうなって、予想はついてたよ。
開け放たれた窓から吹き込んだ風が、教室のカーテンをなびかせる。
僕はね、授業なんか聞いちゃいなかった。左耳にイヤホンを突っ込んで、空を見上げながら世界一だと信じて疑わなかったあのバンドの、あの曲を聴いてたんだよ。
ふと右手が閃いて、強くペンを握っていることに気がついたんだ。
小説は……もう二度と書けないかなぁ。僕には夢がないからね、もう、全部捨ててしまったからね。
鋭い痛みが僕の胸に走って、斜陽がなんとなく目の奥をくすぐるんだ。
泣きたいなぁって、なんか苦しいなぁって。
地面にようやく足が着いて、体の重みっていうのを知っちゃったのかもしれないな。空を飛んでる時は、あんなに体が軽かったのにね。
窓の外を飛ぶ鳥を見上げながらふと思ったんだ。
鳥っていうのは飛んでるんだからさ、いつまでも夢見てんじゃないのかなぁって。そんなこと言ったら、君はきっと僕を嘲笑するだろうね。いつまでも夢見てるってのも、疲れるもんね。
隣の席の女に、ペンで肘をつんつんと突かれたんだ。驚いた、僕が眠っているように見えたのか? 僕は空を見上げてただけだよ。
まあ、夢なら今の今まで見てたんだけど。
僕の夢はね、驚くなよ? 終末さ……。
世界が終わるまでのカウントダウンっていうのを体験してみたかった。そう、僕は世界を救いたかった。だけどもう諦めたよ。
僕は普通の人間だからね、世界なんて救えない。
当然のことだろう? 馬鹿みたいな夢は淘汰されて、そんで大人になる頃に体内に残っているのは、酷く現実的で夢だなんて呼ぶことすらおこがましいような、そんな空虚な未来の予想なのさ。みんな知ってる。
一つ、くだらない話をしていいかな? 返事がないね、なら勝手にするよ。
そう、僕の夢がただの気持ち悪い妄想でしかないんだって、ようやくそのことが分かってきた、そんな時だった。僕は放課後の教室で、彼女と出会ったんだ。ちょうど今日みたいに風が強くてね、開け放たれた窓から吹き込んだ風が彼女の髪を強くなびかせていた。
見とれそうになったかって? さあね……。
ともかく、彼女は僕にこう言ったのさ。
「世界、救いたいの?」
って……。
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