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葉宮はうんと大きく頷いた。
「委員長が藤見くんに保健室へ連れていかれたあと、すぐに先生が来てさ。サイレンが鳴ったから委員長も知ってると思うけど、赤上くんはすぐに救急車で運ばれて、板崎くんは先生とどっかに行っちゃった。
あ、学級委員くんは聞き分けできる、救急車とパトカーのサイレンの音?」
「当たり前だろ。僕なんか四歳からできるわ」
「そらーすごいね。わたしは苦手。まあいいんだけど、当然うちのクラスは一時間目二時間目の授業が無くなって、自習になったってわけ。
警察とかいろんな人が来たせいで、北校舎の空き教室でね」
僕はなんと言い返そうか迷った。確かに葉宮の気持ちはありがたいんだが……。僕が知りたいのはそういうことじゃない。
「どうして板崎は、あんな暴挙に至ったんだ?
」
僕が知りたいのは、そこだった。
板崎魁人はクラスメイトから受けていた陰湿ないじめのせいで、一学期の後半から不登校になっていた。なのになぜ、今朝は教室にいたのだろうか。
「ああ、それね……。板崎くん、親も結構ひどい人でさ、結構虐待とか、受けてたみたいなんだよ」
「虐待、ね」
僕の知ってる限りでは、葉宮も両親から虐待を受けていたはずだ。最近は落ち着いているみたいだが……。
「そ。それで、板崎くんって、一学期の途中で学校に来なくなったじゃない? それに怒って、さらに虐待が酷くなったみたいでね。まあ最近じゃあ殴る蹴るで済まなくなってたらしいんだけど、ついに昨日、お父さんがさ、部屋に包丁持ってきたんだって」
「包丁?」
僕は顔をしかめた。物騒な話だ。
「うん。学校に行かないんなら殺すぞってね。大変だよね、板崎くんも。学校ではいじめられ、家では虐待プラス脅し。板挟みってことなのかな。それで仕方なく、学校に来たみたいなんだけど……」
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