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とうとうこの女、頭が蒸発してしまったのかと思った。
「世界を救ってみる、だと?」
「ええ、あなたの願い、叶えてあげるわ」
僕は堪えきれず、とうとう笑いだした。何を言ってるんだか、この女も人のことを言えないくらい、頭の中がハッピーパーティーじゃあないか。もしかしてバースデイなのか? そりゃハッピーバレンタインだぜ、メリークリスマス!
「そりゃ面白いな。どんな風にだ?」
唯川は微笑して、躊躇いもなく桜色の唇を動かした。
「わたしが、この世界を終焉の危機にさらしてあげる。それをあなたが救うの、分かる?」
「分かるか馬鹿」
そんな簡単に世界を終末の危機にさらせたらテロリストも苦労しないっつーの。ついでにサラリーマンも。あと僕も!
「まあ、もし仮にだ。仮に、お前がこの世界を滅亡だかなんだかの危機にさらせたとして、だ」
「なにかしら」
唯川は不服そうな目で見つめてきた。
「僕にどうやってそれを救えっていうんだよ。僕ぁ特殊能力なんざ持ってないぜ? あと覚醒するつもりもない。それとも、何か特別な力をお前が与えてくれんのか? おいおい、そんなら世界を救うのが僕である意味がないじゃないか」
僕はドヤ顔で唯川を論破してやった。唯川凪咲は確か学年順位がいつも四位とか六位とかの超頭のイイ上位層の連中だったはずだ。それを毎回学年順位ドベのあたりをさまよう僕が倒す、素晴らしいじゃあないか。なんか虚しいけど。
「そうね、確かにそうだわ」
「はん、そうだろう? だいたいお前もお前で、何言っちゃってんの感じなんだよ最初から。世界ってのはな、そう簡単に滅亡したりしねーんだっつーの。五十億年の歴史が、僕らの短い数十年の人生の間で突然終わりを迎えると思うか? いいやそんなことはない。世界ってのはこれから何億ね」
「ああ、いいこと思いついた」
僕の言葉を(多分わざと)遮って、唯川が声を上げた。僕の頬が一瞬引きつる。
「いいことって?」
「あなたが世界を救う方法、良いものがあったわ」
「そりゃおめでとう。ハッピーバースデイってやつだぜ」
ああそれともバレンタインだったか? おっとバレンタインは二月だったなわっはっはと続けようとして、想像以上に唯川がシラケた目をしていて怖気付いた。
「で、なんなんだよそれ、その、世界を救う方法ってのはよ」
「クイズよ」
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