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彼はまぶたを開けた。今は何時だと、枕の横に置いていた携帯を開いて時刻を見た。9時半だった。ほう、もうこんな時間か、と彼はため息をついた。暖炉の火が消えている。レンガ製の壁に水滴が滴る。彼は寒いな、と毛布を肩の上までかけ直して、同じベッドの横にいるエルフの方に体を向けた。 エルフは枕をクッション代わりにお尻の下にしいて、足を伸ばして座っている。そうして、腰までかけた毛布の上に、彼女の耳くらい大きいペットのカエルを乗せて戯れている。 エルフは金色の艶やかな長い髪と、エメラルドグリーンの瞳と、笹のようにしなやかな耳を持つ。身体つきは華奢である。春風のようにふっくらした胸とくびれをウール生地の寝巻きが包む。彼は右掌で頬杖をついてカエルと戯れるエルフを見た。ほう、綺麗だ、と再びため息をついた。 しかし、彼はエルフの優しい白い手が触れるカエルが好きではない。カエルは、白い肌のエルフと並べると一層目立つ焦げ茶色の皮膚を持つ。そして、その皮膚の中にいくらかの黒いこぶがある。彼はそのこぶにグロテスクな感じを受けた。 「おい、そのカエルを僕が見えない場所に放ってくれ」と彼は頬杖をついたまま言った。 「あら、起きたのね」エルフは整った顔を彼の方に向けて、エメラルドグリーンの瞳を彼の口元に差す。カエルは彼女の丸い太ももに乗ったままだ。「おはよう」そう言うやいなや、エルフは視線を再びカエルに戻して、黒いこぶをゆっくり撫でだす。触られるたび、カエルは身体を震わす。 「ああ、おはよう」そう言って、彼は3度目のため息をついた。そうして、頬杖をやめて、彼女と同じように枕をクッションにして座る。 窓の外を見ようと振り返る。窓が曇っていて外が見えない。彼は自分の服の袖で窓を拭く。そうして、彼は窓を覗く。 外では凍った風が吹いている。あたりの雑草が心なしか白い。エルフの乳房ほどなだらかな丘陵の麓で、赤い鱗の翼竜が大きな羽根をばたつかせている。 はあ、あれは羽根を動かして身体を温めているんだな、と彼は外がどれほど寒いか理解した。
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