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すると、うふふ、とエルフは微笑んで彼の方へ顔を向け、「気づかないなんて、あなたってやっぱり悪い人」と言い、再び顔を天井に向け、死んだように眠った。エルフの胸の丘陵が上下に動くのを見て、彼はそうか、エルフは死んだふりをしたのか、と思った。そうして、黒い箱に目をやる。依然箱の奥底には蝿の死骸。 死んだように眠るエルフと、眠ったようにに死んでいる蝿。彼はそれらを交互に見遣った。月光に照らされるエルフと、暗い箱でひっそりと死んでいる蝿。カエルの咀嚼音がまだ聞こえる。エルフは目を瞑ったまま口元だけうふふ、と笑った。 「あ」彼は鋭い声を出した。声が部屋に響く。 月光が揺れる。 「おい、俺の嫁は......」 彼はすべてを言う前にベッドから起き上がり、服を着替えると、恨めしい顔でエルフを睨みながらすぐに扉を開けて、隣村にいる妻の元へ走って向かった。 エルフは扉から出て行く彼の後ろ姿を見た後、乱れた毛布を整えた。整えた毛布をふっくら膨らんだ乳房の上に優しくかけると、うふふ、とまた笑って、そうしてエメラルドグリーンの瞳を静かに夜の中に沈めた。
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