それは突然に

2/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
気がつけば太陽が真上のあたりにいた―― 美郷は「少し待っててね」と言うと、走って公園を出ていった。 一人では歩く事すらままならない僕は、美郷の言葉通り、公園のベンチに座っていた。 朝のうちは曇っていた空が、いつのまにかすっかり晴れていて、気温はこの季節に珍しく暑いくらいだった。 僕のいる場所から少し離れた所で遊ぶ男の子をずっと見ていた。お母さんとボールを蹴って遊んでいる。 その隣では美郷と同じ歳くらいの子供たちが、鬼ごっこをしているのだろうか、キャーキャーと楽しそうに走り回っていた。 ――僕にもあんなに動く足があれば、もっと美郷を楽しませてあげられるのに―― なんとかして美郷を楽しませてあげたい―― 僕の気持ちは今にも口に出てしまいそうになった。その反面、 美郷は僕のことをどう思っているのだろう―― そんな事を思ってしまう。 「ごめん、ごめん、待った?」 美郷が走って帰ってきてくれた。 手には小さな巾着袋が下げられている、僕の隣に座ると、美郷はその小さな袋を広げた。 中から出てきたのは、アルミホイルに包まれた手のひらサイズの塊、美郷はホイルを半分破り、僕に渡してくれた。 おにぎりだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!