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気がつけば太陽が真上のあたりにいた――
美郷は「少し待っててね」と言うと、走って公園を出ていった。
一人では歩く事すらままならない僕は、美郷の言葉通り、公園のベンチに座っていた。
朝のうちは曇っていた空が、いつのまにかすっかり晴れていて、気温はこの季節に珍しく暑いくらいだった。
僕のいる場所から少し離れた所で遊ぶ男の子をずっと見ていた。お母さんとボールを蹴って遊んでいる。
その隣では美郷と同じ歳くらいの子供たちが、鬼ごっこをしているのだろうか、キャーキャーと楽しそうに走り回っていた。
――僕にもあんなに動く足があれば、もっと美郷を楽しませてあげられるのに――
なんとかして美郷を楽しませてあげたい――
僕の気持ちは今にも口に出てしまいそうになった。その反面、
美郷は僕のことをどう思っているのだろう――
そんな事を思ってしまう。
「ごめん、ごめん、待った?」
美郷が走って帰ってきてくれた。
手には小さな巾着袋が下げられている、僕の隣に座ると、美郷はその小さな袋を広げた。
中から出てきたのは、アルミホイルに包まれた手のひらサイズの塊、美郷はホイルを半分破り、僕に渡してくれた。
おにぎりだ。
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