一.

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「……あの、先輩? その肩にいる虫は……」 「この子? 通用口のところでひっくり返ってたから、戻してあげたらついてきちゃって」 「ついてきちゃって!?」 「かわいいでしょ? ほら、みて。黒い斑点がテントウムシみたいで」 「そのわりには大きいですよ!」  シェリーは虫好きである。魔物であれなんであれ、虫にまったく抵抗がないらしくこうやって持ち込むこともしばしばだ。  前はやたら大きい、世間では害虫とも呼ばれる虫を手の甲にのせて話しかけていたこともあった。  そして幸か不幸か、彼女自身、虫に好かれる性質の持ち主のようで懐かれることも多い。 「そうかしら? まあいいじゃない」 「私、先輩の左側に立つので左肩にいるのはちょっと……」 「右ならいいのね?」 「……いやそういうわけでは……」  右ならいいかと聞かれたらそうではない気もしてきて言いよどむ。  クリーム色の明るい色に、白い体に黒い斑点がある虫はやはり似合わない。
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