1話 はじめての朝

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1話 はじめての朝

 少しの冷たい風が、立てつけの良くない窓の隙間から顔を覗かせて、僕の眼を覚まさせた。古そうな毛布から埃が舞い上がって、きらきらと星のように散らばった。  昨晩、ひたすらに涙を流していたせいで薄く腫れた目を窓の外に向けると、つらつらとした朝露がまだ青い午前5時の空をうつしていた。  しばらくして、部屋のドアがノックされる。 「はい」と無機質な返事をした後で、ドアが開けられた。僕は当然、前日に僕をあの施設から引き取った浅間という老人が顔を覗かせると思っていただけに、驚いた。 「おはようございます、テルさん」そう言って顔を覗かせたのは少女、の様なロボットだった。  僕は上手く返事ができずにそれのように固まった。 そして、後ろからぎしぎしと重い足音が近づいてきて、しわしわの顔を出したとたんに家族に向けるように老人が笑いかけてきた。 「昨日は長旅で疲れただろう、家に着いてからすぐ寝てしまっていたからね。改めて挨拶もしたい事だし、朝食、一緒にどうだい」 「一緒に食べませんか?」男に頭を撫でられながら、それも言っていた。     
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