1話 はじめての朝

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 僕はまだよくわからないけれど、養育里親と言うやつらしく、期限付きの家族ではあるけれど、どうかここでは本当の家族のように思ってくれていいと、言っていた。  けれど僕はそんな言葉をすぐには呑み込めずに、また、部屋に籠ってしまった。それが良くないとはわかってはいるけれど、けれど、良く分からなかった。  老人は無理に関わろうとはしてこなかった。それは申し訳なくも、うれしくもあった。  数時間が過ぎた頃、トイレに行こうと立ち上がると、ドアの下に一枚の紙が置かれていた。 (良かったら、外に行ってみませんか)  いつからそこにあったのかは分からないけど、とりあえず見ぬフリをした。  今まで色々な物をそうして来たように。そうやって色んなものを避けるたびに思う。   生きている意味も分からず、だからと言って死ぬこともせず、学校へも行かず、苛められ、今は知らない人に引き取られ、この15年間は何なのだろうと、今までいくつかそうして来たように、母の事や、嫌いな父との日々を思い返していた。あれから今でも、自分の生きているこの世界が夢ではないかと思うときがある。  本当の幸せとは、いったい何なのだろうと、いつか国語の授業で出された課題を今でもたまに解こうとしていた。けれど、いつまでも分からなかった。  学校。     
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