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「今井…今井?」
竹内の呼ぶ声でハッと我に返った。
もう周りはまばらでほどんど帰宅した後だった。矢野の姿もない。
竹内「大丈夫?体調悪い?」
奏「うぅん、ごめん。竹内くんはどうしたの?」
竹内「あー、うん」
竹内は目を伏せ少し困った様な顔をした。
奏「…??」
竹内「今日…あまり話せなかったなって」
あっ…
奏「そっ…そうだね」
竹内「席も遠くなったからね」
奏「うん…」
僕、自分の事でいっぱいいっぱいで竹内くんの席知らない…。
沈黙が流れた。
竹内「今井」
竹内はビクッと体を震わせた奏の手を取った。大きくて矢野とは違い少しガサガサしていて野球をやってるせいだろう。
そして包んだままスリっと優しく撫でた。
それが少しくすぐったくてふっと笑い竹内を見上げると、目を見開いた。
竹内はそんな奏を見つめながら同じ様に笑っていた。
その顔は安心したようにも見えた。
ドキン…っ!
竹内「じゃあ明日、また」
奏「うん、部活頑張って」
竹内「ありがとう」
そういうと少し名残惜しそうに手は離れ荷物を持ち手を振りながら教室を出て行った。
奏「………はぁ…」
詰まっていた息を吐くとまだ暖かい手をもう片方の手で包んだ。
そして握り返せなかった自分が
死ぬ程嫌になった。
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