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はぁっはぁっ.....
保健室から一度も止まらず走って勢い良く教室の扉を開けた。
どうして.......?
奏の席に片足をのせて矢野が座っていた。
矢野「お前病人のくせに走んなよ、マジバカか」
苛立ったようにガタンと立ち上がる。
奏「まさか待っててくれてると思わなくて.........」
矢野「別に」
でもあのメールは......
『教室にいる』
短い一文だったけどいろんな意味が詰まってる気がして....。
矢野はさっさと横を通り過ぎ、出口に向かい奏もカバンを持つといそいで後を追った。無言で矢野の後ろについて歩く。
あれ......こっち僕ん家の方向…。
もしかして送ってくれてる?
あ!そうだ、お礼も言えてないっ!!
タイミングを見計らっているうちに家の前に着いた。
矢野「開けろよ」
今だ!と礼を言おうと顔を上げると奏が口を開く前に矢野が言った。
今日もこの前みたいな事するのかな…
有無を言わさないような仁王立ちの矢野に仕方なく家の鍵を回す。
あれ?開いてる......
鍵はかかっておらずそっと扉を開けると、父の靴がある事に気付いた。
なんで!?仕事のはずなのに.....!
玄関をゆっくり閉めた。
奏「矢野くん、ごめん今日は」
奏父「奏!帰ったのか??」その時、バタバタと重い足音が奥から響いてきた。
や.......やばい.......!!
奏「あのっやっぱり今日は帰ったほうが....」
矢野「は?」
バン!!
半開きだった扉が中から全開に開く。
あっ…
父は姿を見るなりガバッと奏に抱きついた。
奏父「熱が出て倒れたって聞いたぞ!迎えに行こうと思ってたのにっ!大丈夫なのか?!今から病院へ行こう!」
両手で顔を掴まれたかと思うとグワングワン揺らされ、目が回る。
奏「もう大丈夫っ....友達がっ」
父はハッとしてもの応じせず立って見ていた矢野を上から下まで眺めると、ニコッと笑う。
奏父「君が奏を送ってくれたのか?それはありがとう。ささ、入りなさい」
矢野は奏を見る。
奏「.....良かったら」
黙って靴を脱いで中に入った。
奏父「奏、調子悪いうえに帰ってきてすぐで悪いんだが父さんお昼まだで…」
父は気まずそうにポリポリ頭をかく。
奏「もう本当に大丈夫だから気にしないでよ。今からすぐするから少し待ってて。……良かったら矢野くんもどう?」
お礼もしたいし!
奏は腕まくりをして制服のままキッチンへ立った。
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