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ご機嫌な父はすでに大口を開けてパスタをかき込んでいる。
奏父「さぁさぁ食べなさい、ご馳走だぞー!
えーっと」
矢野「矢野です」
その時ピンポーンとチャイムが鳴った。
サツキ「カナいるー?腹減った!」
声と同時に自分宅のように玄関をあがり廊下を進む足音がする。
奏父「あ!さっちゃんだ」
矢野「.......!」
金髪で右耳にピアスをした青い目の男がひょこっと顔を出す。
奏「サツキ!留学からいつ帰ってきたの?」
奏の顔が綻ぶ。
奏父「それが昨日戻ってきたらしいよ。矢野くんさっき言ってたサツキくん。見た目こんなだけどバリバリ日本人だよ。しかもこんな大きいのにまだ中学生なんだ。びっくりだろう?」
サツキ「カナ~!!I miss you !ハニー!」
サツキは走り寄り奏をスッポリ包んでも余るような大きさの手を広げた。
奏「わっわわっサツキたんま!」
矢野くんがいるのにっ!
サツキが触れる前にスッと矢野が間に入った。
奏「や…矢野くん?」
矢野「メシ食いたいなら手洗え」
サツキはジロッと至近距離で矢野を睨む。
しかし矢野は高身長でもあり全く引けは取らない。
サツキ「何こいつ.......なんでここにいんの」
奏「サツキ、早くしないと冷めるよ」
奏が自分の分をサツキの前に置いているのを見て矢野は舌打ちをした。
サツキ「ねぇカナ何そのエプロン、かわいすぎ」
奏「…もうその話はやめてよ」
奏は頬を赤く染めたまま溜息をつきようやく脱いで父に分けてもらった分を受け取ると食べ始めた。
サツキ「カナの作ったご飯ホント世界一!!」
サツキは頬を撫でながら隣りの奏の頭にキスをした。
奏「大袈裟だよっ」
奏父「違うぞ~さっちゃん、宇宙一だー!!」
ガハハと笑う父を横目に矢野をちらっと見る。
この流れで言ってくれたりしないかな?
矢野は無言のまま黙々と食べ進めていた。
食器の音も静かだ。
綺麗な食べ方するんだなぁ…
お口に合えばいいけど。
奏「あの......ごめんね矢野くん。騒がしくて」
矢野「別に」
しかし矢野はいっこうにこっちを見ない。
しゅんとなる奏とひたすら無表情で食べ続ける矢野をサツキは交互に見た。
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