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「いらっしゃい、いっぱい食べてってね。」 矢野の姉が生クリームたっぷりのホールのイチゴシフォンケーキを持ってきた。 竹内「うぉ!うまそー!!!いただきます!!」 奏「いただきます…」 ドキドキしながらフォークを口に入れてチラッと竹内を見ると目が合い爽やか過ぎる位の笑顔を向けられ、なお心臓が壊れそうな位激しく動き出す。 奏「ごっごめん、ちょっとトイレ」 いても立っても居られず席を外した。 だっダメだっ! すごくおいしいはずなのに緊張で味がしなくなってるしっ.......! 出ない用を足すわけにも行かず鏡の前で深呼吸をした。 それにしても竹内くん.....私服姿もかっこいいなぁ…奏は結局、無難な薄紫のパーカーに黒のタイト気味なジーンズ。 竹内は青ストライプのシャツに濃紺のジーンズ。 矢野は真っ黒の無地シャツに濃ブラウンのズボンだった。 矢野「帰れ」 奏が個室に入ったと同時に低い声でサツキに言う。 サツキ「中学生をここから1人で帰らせる気?」 サツキは鼻で笑う。 竹内「ちゅっ....中学生なのか?!てっきり同級かそれ以上かと…」 竹内は思わずポロっと口からケーキを落とした。 サツキ「なので大丈夫です」 矢野「同じ他のガキ共と遊んで来いよ」 サツキはムっと眉間にシワを寄せる。 サツキ「お前さぁ、矢野だっけ?俺がカナと一緒にいるのが気にくわないんだろうけど、小さい時からずっと一緒なんだから今さら邪魔はできないよ」 竹内「サツキくん、今井が本当大好きみたいだね」 竹内が矢野を見ながら面白そうにアハハと笑う。 サツキは頬杖をつき車が流れる窓の外を見つめながら言う。 サツキ「カナだけだったんだ、こんな容姿を関係なく接してくれたのは。子供にとっちゃこの目と髪は気持ち悪いみたいでさ、カナがいつもそばにいてくれたから強くなれた。カナの為ならなんでも出来るよ、言い寄る変なヤツからも絶対守る」 竹内「ハハッ!まぁ確かに痴漢や変質者は怖いもんな」 矢野「……………」 サツキはジロっとお前のことだと言わんばかりに矢野を睨んだが、変わらずずっと携帯をいじっていた。
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